新型コロナウイルスの影響で、ついに緊急事態宣言が出されました。今は自分と、周りの人の命を守ることが最優先。剣道については、みんなで稽古をできる日がくるのはかなり先になりそうですね。それぞれが、一人でできることをやるしかないみたいです。
一人稽古と言えば、素振り。みなさん、素振りしてますか。私は毎日やっています。画像は「素振りアプリ」のホーム画面。百秀武道具という剣道具屋さんが開発したアプリです。スマホを持っている人は、『剣道/素振りアプリ』で検索してみてください。管理人である私も、毎日使っています。全国の中での順位が出たりして、面白いですよ。
ところで素振りをしているうちに最近どうにも気になってきたのが「小指半掛け」って言葉。島田会長もおっしゃっていた、竹刀の持ち方、構え方の言葉。
「竹刀を構えるとき、左手は小指半掛け。柄頭に小指を半分掛けて持つ」
この持ち方の効果は、私も実感するところです。そうやって持つと、打突の瞬間の剣先がストンと落ちる。打突に冴えが出る。だから、その効果は分かるんです。
分からないのは、「小指半掛け」の理想形。「小指を柄頭に半分掛ける」の「半分」って、本当のところ、「小指の何の半分」なのかってことです。
小指の「長さの半分」ってこと? それとも「小指の腹の面積の半分」? あるいは半分っていうのが言葉のあやで、「ちょいとひっかける」という意味? ひっかける、だったとしたら、ひっかけるのは小指のどこをひっかける?
おそらく「小指半掛け」という言葉を広く知らしめたのは「現代剣道の祖」と言われている高野佐三郎先生です。でも、その高野先生も「半分」という言葉の意味については解説を残していません。では、何なのか。
そんなことを考えてあーでもない、こーでもないと竹刀を振っているうち、最近、こんな発想に行きつきました。
「ちょうどいい小指半掛けの位置、掛け方を決めるのは、薬指と中指なのではないか?」
薬指と中指で竹刀を固定しやすい位置で柄頭をてのひらに収め、その柄頭に小指の先の関節から先を当てて引っ掛ける、すると、かなり収まりがいいことに気づいたのです。
思い返せば全日本選手権六回優勝で「平成の剣豪」と呼ばれる宮崎正裕先生は「両手とも、中指と親指の二本指だけで竹刀を持てるぐらいにしています」と語っています。もちろん小指、薬指を遊ばせているわけではなく「右手も左手もしっかり持つ」とおっしゃっていますが、中指を強調しているあたりが、独特ですよね。
実は宮崎先生以前にも、中指の重要性を語っていた人がいました。「明治の剣聖」という異名を持つ、明治時代の山田次郎吉という先生です。山田先生はこう断じます。
「剣は中指で握るのだ」
中指で握る!? ちょっと衝撃的な言葉。でも明治の剣聖と平成の剣豪がそろって中指を強調しているのだから、何かがありそうだって思いませんか。
現時点、私は手の形のせいなのか、中指だけだとどうもうまく握れません。イメージで言うと「中指と薬指の間で持つ」と、「小指半掛け」がしっくりきます。
まだまだ研究途中ですから今後変わる可能性もありますが、ともかく今はそんな感じ。刀と人間をつなげる唯一の接着面である手の内。手のひらの中に宇宙がある感じで、どこまでも追及が終わりません。
てなわけで今回の内容、子どもたちにはちょっと難しかったかもしれませんね。それでも伝えたかったのは、素振りって、それくらい、ものすごく大切なのよってこと。
私も、素振りでさらに、理想の手の内を追い求めたいと思っています。冒頭の、素振りアプリを使って。